牛乳が「完全栄養食品」とされる一方で、「牛乳は危険だから飲むな」という説があるのをご存知でしょうか?

かなり前から雑誌などでときどき取り上げられているので、耳にしたことがある人も多いでしょう。

いまさら牛乳が危険だといわれても困るのですが、牛乳の危険性がテレビや新聞で報道されないのは、大スポンサーである乳業会社への遠慮からだと怒っている「牛乳危険論者」もいます。

そのような「真相隠ぺい」があるかどうかは別にして、日本内外で牛乳の危険性を指摘する医学者は少なくないので、今回は牛乳が危険だとする説の概要をご紹介することにします。

多くの医学者が指摘しているとはいえ、牛乳危険説はいまのところメジャーな説ではないので、あくまで「一説」としてお読みいただきたいと思います。



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牛乳危険説の由来と経緯

牛乳が危険だとする説は、1960年代の後半からアメリカの小児科の医師などから提唱されだしたものです。

そのきっかけは、黒人の子どもに牛乳を良く消化できない子が多いことが判明したことでした。

その後の調査で、牛乳の糖分を消化できない「乳糖不耐症」は、欧米人を除くとむしろ普通であることが分ってきました(ちなみに日本人の成人の80%前後は乳糖不耐症だといわれています)。

また、当時問題になっていたアレルギー症の増加も牛乳に原因があるのではないかと考える研究者がでてきました。

1983年にはアメリカのニューヨーク州立大学の医学部教授だったフランク・オスキーが「Don’t Drink Your Milk」という本を出版して話題になりました。

この本は日本でも翻訳されて「牛乳には危険がいっぱい?」というタイトルで東洋経済新報社から出版されています。

「牛乳には危険がいっぱい?」東洋経済新報社 1,200円



最近では2014年にイギリスの医学雑誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」が、「牛乳を1日3倍以上飲むと骨折の危険や死亡率が高まる」というスエーデンでの大規模調査の結果を発表して話題になりました。

これは、スエーデン人の女性(39~74歳)約6万人を20年間にわたって観察した記録と、男性(45~79歳)約4万5000人を11年間にわたった観察した記録にもとづくものです。

この調査報告では、牛乳を1日3杯以上飲む女性は、1杯以下の人に比べて「死亡率が90%高く、股関節部の骨折が60%多く、骨折全般では15%多かった」と述べられています。(男性は死亡率にも骨折率にも大きな差がなかったとされています)

報告には「偶然の可能性もある」と但し書きがありますが、大きな話題になったので日本の自民党の畜産・酪農対策小委員会でも「生産者に迷惑がかかるのでは」という懸念の声が上がりました。

こんなに沢山ある「牛乳が危険な理由」

ウィキペディアの「牛乳」の項目では「安全性についての議論」として多くの説が紹介されています。

まず、その項目を見てみましょう。

牛乳に含まれる乳糖(ラクトース)を分解する酵素(ラクターゼ)を持たないヒトは、摂取によって軟便、下痢などが引き起こされる。

特に高齢者においては、飲用によって血中カルシウム濃度が高まると、体内のカルシウムも排出されてしまい、逆に骨粗鬆症を引き起こす可能性が高い。

アメリカ小児科医アカデミーは、牛乳は鉄分不足になるため1歳未満の子供に与えないように勧告している。

人間と牛は違う生き物だから飲むこと自体異常。

牛乳を飲むと骨粗しょう症になる?

この「安全性についての議論」のなかで、とくに違和感を覚えるのは「骨粗鬆症を引き起こす可能性が高い」という項目です。

カルシウムを摂るなら牛乳と言われてきた私たちからすると「まるで逆じゃん」と思わないわけにはいきません。

カルシウムが過剰で代謝のバランスが崩れる?

牛乳をたくさん飲むことでむしろ骨がもろくなるとする論拠は、血液中のカルシウムが過剰になると骨の代謝のバランスがくずれるということです。

カルシウムは骨を硬くする以外に筋肉や神経のはたらきに重要な役割をはたしています。

体内のカルシウムの99%は骨にありますが、必要に応じて骨は血液にカルシウムを放出して各組織に供給しています。

骨の外での役割を終えたカルシウムは再び血液を通じて骨に戻されて、必要な時のために貯蓄されることになります。

この「脱灰」と「再石灰化」のシステムが、牛乳をたくさん飲むことで不調になるというが、骨粗しょう症のリスクが高くなるとする理由です。

信頼できる根拠はないとも・・

ウィキペディアでは「血中カルシウム濃度の上昇がカルシウム排泄を促進し、カルシウムが不足する」という仮説について信頼できる情報は現在ほとんど無い」としています。

「血中カルシウム濃度は常に一定に保たれる作用があるため、牛乳を飲んで濃度が高まること自体が考えにくい」とも述べられています。

また、先ほど触れた「牛乳には危険がいっぱい?」という本では、牛乳には母乳の4倍のカルシウムが含まれているが、牛乳で育った子どもより母乳で育った子どもの方が骨や歯が丈夫だ、と指摘しています。

これは、牛乳にはリンが多く含まれていて、それがカルシウムの吸収をさまたげるからだとされています。

牛乳を飲むと消化不良を起こしやすい?

牛乳を飲むとお腹がゴロゴロ鳴ったり、下痢気味になるとことがあるのは、多くの人が経験しています。

これは乳糖不耐症の人が起こす現象で、日本人の約80%が乳糖不耐症だといわれています。

パーセンテージについては諸説ありますが、日本人に乳糖不耐症が多いことはたしかです。

牛乳にも母乳にも乳糖(ラクトース)が含まれていますが、日本人の多くは5~6歳を過ぎると乳糖を分解する酵素(ラクターゼ)が作られなくなります

ラクターゼを持たない人が牛乳を飲んでも乳糖を消化することができないので、お腹が張る、下痢になるなどの消化不良が生じます。これが乳糖不耐症です。

牛乳を飲むとアレルギーを起こしやすい?

牛乳をたくさん飲むとアレルギー体質になりやすいという説もあります。

その理由は、牛乳のタンパク質は人の免疫システムでは「異物」と見なされやすいということにあるとされています。

もちろん、牛乳に限らず食物として消化器官に入るタンパク質はすべて異物で、アミノ酸レベルまで消化されないと血液に取り込まれることはありません。

牛乳のタンパク質がとくに免疫から敵視される理由は明らかにされていないようですが、あるとしたら乳糖不耐症と関係があるのかもしれません。

また、牛乳アレルギーの人がいるのは事実ですが、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、花粉症などのアレルギー症が増えていることと牛乳の関係が明らかになっているわけではありません。

牛乳を飲むとホルモン異常を起こす?

牛乳は妊娠した牛から搾乳されるので、牛乳には女性ホルモンのエストロゲンやプロゲステロンが多量に含まれています。

また、子牛の成長をうながす成長ホルモンも含まれています。

牛乳を飲むことでこれらのホルモンが人の内分泌にさまざまな異常をひき起こす可能性がある、という説があります。

具体的には、月経障害、生殖機能の低下、免疫機能の低下、アレルギー反応の助長などが指摘されています。

ウィキペディアではこの問題に関して、次のように述べられています。

妊娠牛からの乳であっても女性ホルモンの含有量は1,000 pg/mlであり、他の食品と比較して多いわけではない。例えば大豆における大豆イソフラボンの含有量は1.4 mg/g (1400,000,000 pg/g) 程度あり、このうち半分程度が女性ホルモンとして扱われる状態に変化する。
(引用:wiki

まとめ

牛乳の危険性について解説しましたが、いかがでしょうか?

牛乳には危険性があるという説の1つひとつは証明済みとは言えないものもあるようです。

しかし、牛乳を完全栄養食品あつかいするのは間違いですし、過剰に飲むことにはたしかに危険性があるかもしれません。

牛乳危険説と有用説の「どちらを信じるかはあなた次第です」で片づけるわけにはいきませんが、どちらかの説をうのみにするのではなく冷静に判断するのが大事かもしれません。



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